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2012-08-17

自宅の排水問題(沢の保全)

沢の保全

渡辺建築工房がある分譲地の道路には、雨水や生活排水を流す側溝がある。これの行先について、漠然と河川とだけ認識していて、その行先の具体的な状況を知ることが最近までなかった。

沢の保全

分譲地がある丘の山裾の様子。農業用の排水路をはさんで田園が広がっている。

沢の保全

別の角度から。手前に農業用に供給するためのU字溝があるが、その左側、ボサでよく見えないが、そこの部分に沢がある。実は、分譲地の排水は、その沢に合流するようになっていたのだが、ここ数年、沢の流れが失われた状態になっていたのだった。そのことを知ったのは、なんと昨年の暮れにご近所に引っ越されてきた 鐸木(たくき)さん という方から最近になって教わって、初めて知ったのだった。

沢の流れが止まってしまったため、分譲地の排水が合流する部分には悪臭を放つヘドロが溜り続け、当然ながら昨年の原発事故の影響もあるから放射線量が高く、また排水を受けるコンクリートの構築物を壊すほどにまでなってしまっていたのだった。

そのことを鐸木(たくき)さんが独自に調べて突き止め、お一人で黙々と草刈りやら掘りさらいやらを行って下さっていたことを知るに至ったという訳だったのだ。自分の地域がどのようになっているのかについて、結果的に全く関心がなかったということになり、恥じ入るばかりなのであった。

沢の保全

あらためて今日、沢の状態がどうなっているか、確認してきた。分譲地の南東のはじから急斜面を慎重に下りていくと、沢のところに丸太を架け渡した簡単な橋がある。その下には、ゆっくりとではあるが確実に水の流れが復活していた。U字溝からの分水量が確保されたから、かろうじて維持されているに過ぎないという、きわどい状態ではあるのだが・・・。

沢の保全

橋の上流のほうへ行ってみる。勢いよく流れが復活している。とても気持ちがいい。

沢の保全

橋の下流も流れが戻っていた。これが本来の状態なのだが、最近の圃場整備などの影響で、全国からこういった清流が急速に失われつつある。このことによる環境への影響についても、鐸木(たくき)さんからいろいろと教わった次第。しかもこの沢には、栃木県では絶滅危惧種に指定されているツチガエルというカエルも生存していたことを教わるにいたり、俄然、この清流を守り続けなければと思ったのだった。

沢の保全

沢の最も下流、コンクリート溝になって排水路に流れる部分では、わずかではあるが流れ出ている。ここまで確認してホッとした。そして、この流れをどうにかして継続的に維持するための努力をしていかなければと思った。

沢の保全

上の写真は、分譲地の排水が沢に合流する部分。私は知らなかったが、ここにヘドロと化した泥がたまり放題になっていたのだ。沢の流れがなかったから、流れる前に土にしみ込んで、一緒に流れてきた土砂等がたまり放題になったという訳である。

沢の保全

上の写真の、上の方に丸い口が見えているところが、分譲地の排水が流れ出る口となっているところ。長い間、ヘドロが溜まっていた名残で、水の底はまだまだ綺麗な色をしていない。灰色のヘドロ色をしているのだが、沢の流れさえ維持されれば、元の綺麗な状態が徐々に復活するはずだとも教わった。

また、絶滅危惧種のツチガエルを発見したのも、鐸木(たくき)さんの努力のおかげで一時的に流れが復活した際に、なんとこの場所で確認されたのであった。今日は、東京ダルマガエルが2匹、見つかっただけで、ツチガエルはいるのかいないのか、私には確認できなかった。無事でいてくれればよいのだが・・・。

沢の保全

農業用のU字溝の右脇に、沢への流れのためのトンネルがある。もともとの沢の流れは、このU字溝へと合流してしまい、しかもトンネルからの水流が予想よりも減ったことが原因で流れが失われた可能性が高いと想像された。そのことについては農家の方々も認識されたと思われ、写真のように沢への流れを確保するように保持してくれた。これまでの経緯などは私もよくわからないのだが、いずれにしてもこのように協力してくれて、お互いのために清流を維持しようと考えて行動してくれたことに、とてもありがたく、また嬉しく思った次第。こういうことを大切にしながら、農家さんたちとは地道に交流していきたいものだと強く思った。

沢の保全

再び、分譲地の排水が沢に合流するところ。コンクリートの擁壁が斜めに倒れてしまっていて、沢水が排水口から最短距離で農業用排水路に漏れ出てしまっている。これをなんとかしないといけない。目下の最大の課題である。これより下流の、ちょっと広く湿地帯となっているところも、結構な量の沢水が排水溝の方へ漏れ出ていた。そのために、上流である程度以上の水量がないと、最後まで流れが維持できない状態にあるのだった。

沢の保全

以上が簡単な概略なのだが、水の流れというものがこれほど嬉しく、またありがたく、そして貴重なものであるかと思い、沢を離れるのが惜しいと感じた。いつまでも眺めていたいの思いが募るばかりであった。これからも、ちょくちょく見に来たいものだ。

沢の保全

自宅へ戻るとき、空き地の脇の家の出窓から猫ちゃんたちが出迎えてくれた。「どこへ行ってきたの?何してたの?」と聞かれているような気がした。

沢の保全

自宅の様子。現代の技術を屈指して便利な生活を送ることが出来る陰には、様々な環境破壊なども引き起こしていることは否めない。だからと言って、昔のように庭に肥溜めを作って処理するような生活には戻れまい。しかし、人間が生活することはそれ自体が環境を破壊することだと簡単に割り切るのもいかがなものか。要はわれわれ一人一人の意識の持ち方次第で、どのようにも改善出来ることが分かっているのだし、とりあえず直に出来ると分かっていることまでも放棄する理由はどこにもないのではないか、と思ったのであった。

個人の意識もそうだが、縦割り行政の打破こそ最もメスを入れるべき分野ではないか?栃木県知事も、絶滅危惧種の保全活動にあたっては、次のような公式見解を出している。

レッドデーターブックの発刊にに際して

以下、一部を引用すると

「自然界は、多様な生物が環境に応じた相互の関係を築きながら生態系を形成し、バランスを維持しています。人と自然の共生を図りながら、栃木県のかけがえのない豊かな自然と美しい風景を次の世代に確実に引き継いでいくことは、私たちの果たすべき重要な責務であります。」

とある。これをお題目で終わらせないでほしい。行政が、その見本を示してほしい。